アトピー性皮膚炎の原因CAUSE
アトピー性皮膚炎とは、痒みを伴う皮膚症状が出現したり消失したりを繰り返す皮膚病のことです。アトピー性皮膚炎の明確な原因については現時点では解明されてはおりませんが、もともとアレルギーを起こしやすい体質の方や、皮膚のバリア機能が低下しやすい方 などに起こりやすいと考えられています。
皮膚は、アレルギー物質や汗などの様々な刺激、細菌などの微生物が体内に入らないように人間の体を守る「壁」としての役割を担っています。しかし、皮膚の機能が低下した場合には、アレルギー物質や様々な刺激が皮膚から体内に入ってしまい炎症が起こります。炎症が起きた皮膚は、赤く腫れ、痒みが出現してしまいます。この症状が慢性的に繰り返し起こることが、アトピー性皮膚炎と考えられています。
アトピー性皮膚炎の主な原因は
以下の2つが考えられます。
① 患者様の体質
◆ アレルギー体質(アトピー素因)花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎などのアレルギー体質がある方
家族の中にアレルギー体質の方がいる方
◆ 皮膚のバリア機能の低下皮膚を外部から守るバリア機能(保湿能、感染防御能、修復能)の低下
② 環境による要因
◆ アレルゲン(アレルギー反応を生じさせる物質)食べ物、ホコリ・ダニ、ペット類、花粉、金属など
◆ 皮膚に触れる刺激物質よごれ、汗、日光、衣類の繊維、洗剤、柔軟剤、シャンプー、洗顔など
◆ 物理的・精神的ストレス過労や睡眠不足、ストレスなど
アトピー性皮膚炎の種類IMPORTANT POINT
アトピー性皮膚炎は、皮膚がわずかに乾燥する程度の軽度の症状から、全身の皮膚が真っ赤になり、皮がめくれてしまうような重度の症状まで様々な症状を引き起こします。
皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌やウィルスなどの病原体が皮膚の中に簡単に侵入して感染症を生じてしまう場合があります。また、目の周囲を掻きすぎたりした場合には、若年者であっても網膜剥離や白内障などを起こして手術が必要になる危険性もあります。
同じ一人の患者様であっても、季節や生活スタイルなどによって皮膚症状は日々変化するため、その時々の皮膚症状に合わせた適切な治療を行い、悪化させないようにコントロールすることが大切です。
アトピー性皮膚炎の治療方法TREATMENT
アトピー性皮膚炎の治療には、塗り薬、飲み薬、注射製剤などがあります。
塗り薬
塗り薬には、保湿剤、ステロイド外用薬、非ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、JAK阻害剤、PDE4阻害剤など様々な種類があります。
保湿剤
アトピー性皮膚炎は、皮膚が乾燥して皮膚のバリア機能が低下することが大きな原因と考えられています。そのため、毎日しっかりと保湿剤を使用して、皮膚の乾燥を防ぐことがとても重要です。お風呂後は、出来るだけ速やかに(5分以内が目標)保湿剤を使用して、皮膚から水分が蒸発することを防ぐことが大切です。
ステロイド外用薬
ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果があります。ステロイド外用薬には様々な強さのランクがあり、塗る部位や皮膚の状態に応じた適切なステロイド外用薬を選択することが重要です。ステロイド外用薬は、長期に使用した場合などに皮膚萎縮や毛細血管拡張などの症状が生じる可能性があるため、医師の指示通りに正しく使用することが重要です。
タクロリムス外用薬(プロトピック®軟膏)
ステロイド外用薬である程度皮膚の炎症が安定した場合や、ステロイド外用薬で効果が不十分な場合などに使います。
JAK阻害剤
ヤヌスキナーゼ(JAK)経路を阻害して皮膚の炎症を改善させる外用薬です。
PDE4阻害剤(モイゼルト軟膏®)
ホスホジエステラーゼ(PDE)4の活性を阻害して皮膚の炎症を改善させる外用薬です。
光線療法
皮膚症状や痒みのコントロールが不十分な場合には、ナローバンドUVBによる光線療法を受けていただくことも可能です。当院で採用しているナローバンドUVB療法とは、安全性が高く、治療に有効な非常に狭い波長(311±2nm)の光線を皮膚に照射し、皮膚症状を改善させていく治療法です。光線を照射する時間は通常は数分程度で、週1〜2回程度の頻度で光線を照射できると有効性は高くなります。光線療法の医療費は3割負担の方で1回1000円程度です(保険適応)
飲み薬
痒みが強い場合には、飲み薬も併用してかゆみのコントロールを行う場合があります。
生物学的製剤・分子標的薬(JAK阻害剤)
医師の指導のもと定期的に通院(半年以上)して適切な治療を行なっているにも関わらず、十分なコントロールが難しいアトピー性皮膚炎の患者様に対しては、注射製剤(生物学的製剤)やJAK阻害剤(分子標的薬)での治療を行う場合があります。(小児でも可能です)
これらの治療は保険適応ですが医療費が高額ですので、開始前にはあらかじめ医療費などについて十分な説明を行います。
生物学的製剤(注射製剤)
デュピクセント®
ミチーガ®
アドトラーザ®
イブグリース®
JAK阻害剤(内服薬)
リンヴォック®
オルミエント®
サイバインコ®
アトピー性皮膚炎の予防方法PREVENTION
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部屋をこまめに掃除する
部屋をこまめに掃除して、ほこりやカビ、ダニなどを減らすことが重要です。また、定期的に布団をきちんと干すことも大切です。
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ストレスをためない
ストレスもアトピー性皮膚炎を悪化させる要因になるといわれています。過労や睡眠不足は避けて、規則正しい生活を行うように心がけましょう。
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皮膚はやさしく洗って清潔に
手で泡立てた石鹸で優しく肌を洗いましょう。ナイロンタオルで皮膚を強くこすって洗うと、皮膚の状態が悪化してしまう場合があり注意が必要です。体を洗った後は、石けんのすすぎ残しがないようにシャワーでしっかり洗い流しましょう。
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洗った後は保湿をしっかり
保湿剤は入浴後5分以内に塗るのが効果的と言われています。保湿剤を早く塗らないと皮膚から水分が蒸発していってしまいますので、入浴後は出来るだけ速やかに保湿剤を塗るように心がけましょう。
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塗り薬は「必要な量」を「必要な期間」塗ることが大切
塗り薬は、少量を薄く伸ばすのではなく、皮膚がある程度ベタベタするぐらいしっかりと塗ることが重要です。また、塗り薬の治療を急にやめてしまうと皮膚の状態が悪化してしまう危険性があります。塗り薬の治療を自己判断で中止することはやめて、必ず医師の指示に従ってください。
外用治療の適切な方法については患者様毎に異なるため、通院中にこまめに指導を行っていきます。外用治療についてご不明な点があれば、いつでもスタッフにご質問ください。
アトピーQ&AQ&A
- Q.ステロイドは子どもにも使えますか?
- お子様の場合でも皮膚の状態によってはステロイドの塗り薬を使用する場合があります。ただし、お子様の場合、スキンケアで皮膚症状が改善することも多いため、正しいスキンケアの方法や日々の生活指導をしっかりとお伝えすることを心がけています。
- Q.保湿剤は市販のものでいいですか?
- 市販の保湿剤で肌の調子がいい場合には、市販の保湿剤を使用しても問題はありません。
- Q.アトピー性皮膚炎はストレスと関係しますか?
- アトピー性皮膚炎に限らず、皮膚症状はストレスと関係していると考えられています。過労や睡眠不足、不規則な食生活は避けて、規則正しい生活をするように心がけましょう。